日本プロフィバス協会

世界で最も使用されているフィールドバスPROFIBUS
産業用Ethernetの標準PROFINET

PROFINET OVER TSN

TSN技術

産業用Ethernetの普及が進む中で、工場現場の通信にリアルタイム性を付加する新しい技術としてTSN(Time Sensitive Networking)が注目されています。PI (PROFIBUS and PROFINET International)もPROFINETのTSN技術への拡張を「PROFINET OVER TSN」と名付け、TSNに対応したPROFINETの仕様書(V2.4)を発行しました。日本プロフィバス協会の正会員は本仕様書をPI websiteからダウンロー ドできます。PIはメンバーが迅速にPROFINET OVER TSNの製品を開発できるためのサポートと認証試験の準備をすすめているのです。

TSNとは

もともとEthernet自体は産業用の厳しいリアルタイム性を満足するための規格ではありませんでした。TSNはEthernetにリアルタイム性とデータのスケジューリングを実現するためにIEEE802.1Qで定義されたEthernetの標準規格です。 TSNの仕様はすでにIEEE(米国 電気学会)からリリースされています。そして、IECとIEEEのジョイントワーキンググループ"IEC/IEEE60802"にてTSNを産業用オートメーションで使用するためのプロファイルについて討議が進行しています。

TSNのアドバンテージ

IT技術の進化に伴い生産現場のネットワーク上にもウイルススキャナ等、多くのコンポーネンツが接続されています。しかし、これらの機器がネットワークのパフォーマンスに影響を与えています。例えば、標準Ethernet(TCP/IP)ではリアルタイム性を必要としない大きなデータパケットが送受信されていますが、ウイルススキャナは大きなデータパケットが存在すると通信パスをブロックします。これによりネットワーク上の各スイッチへのデータパケットの遅延を招き、リアルタイム性を必要とする接続機器に影響を与えてしまいます。

従来、PIを含め産業用Ethernetの普及をすすめる各団体はこの問題を解決するため、独自技術をEthernetに付加してきました。 TSNの最大のメリットは、IEEEの標準技術でEthernet上でのリアルタイムが実現することです。つまり

(1)マイクロ秒単位での同期性をもった通信

(2)リアルタイムパケットと通常のTCP/IPのパケットの同居

(3)複数のリアルタイムプロトコルの並行した使用

が標準技術で可能になります。

TSNのPROFINETへの統合

TSNはEthernetのレイヤ2の技術です。PROFINETは当初よりIEEE標準規格に準拠していますので、従来のレイヤ2技術であるRTとIRTに新しくTSNを加えるだけで、技術統合が可能になります。TSNを導入してもPROFINETでの上位レイヤは変わらないため、パラメータ、診断等、現在のPROFINETの機能は従来通りご利用いただけます。PROFIsafe等のプロファイルについても影響はありません。

Q: TSNはPROFINETを置き換えますか?IRTはどうなりますか?

TSNはEthernetのレイヤ2の技術でありPROFINETの置換えではありません。PROFINETはサイクリックとアサイクリック通信、アラーム/診断、パラメータ化等、オートメーションに必要なサービスを提供していますが、これらサービスはTSN単独のIEEEメカニズムでは提供できません。TSNはPROFINETとかOPC UAのようなリアルタイム性が求められる通信プロトコルについて、リアルタイムを実現できるようにするための技術だからです。 PIはPROFINETのTSNへの対応も進めます。同時にリアルタイム性を保証するRTとIRT技術は今後も使われて行きます。

PROFINET OVER TSNの開発

PROFINET機器を開発する機器メーカーはIEEEの標準技術であるTSNに対応したモジュール、プロトコルスタック、組込モジュールを選択して使用できます。ですから、PROFINET独自の仕様や実装の理解は不要となります。さらに開発用に多くの対応チップが用意されます。

いままで、PROFINET機器はその機能とリアルタイム性の違いにより、コンフォーマンスクラスA、B、Cの3種類の分類がされてきましたが、TSNをサポートする機器はコンフォーマンスクラスDと定義されます。

ご注意いただきたいのはコンフォーマンスクラスDでは、従来のIRTに相当する厳しいリアルタイム性を実現する仕様と同時に、マーケットで多く用いられるRTに相当する機能も包含していることです。

Q:TSNでは専用のEthernetプロセッサが必要か?標準のEthernetのコンポーネントで動作するのか?

TSNを実装するには、TSNに対応したハードウエアコンポーネントが必要です。既にインストールされているほとんどのEthernetコンポーネントではソフトウエアだけではTSNへの拡張ができません。しかし将来的には”TSN対応Ethernetモジュール”がマーケットの標準Ethernetモジュールとなるでしょう。主要なデバイスメーカーはTSNに対応したハードウエアの開発をスタート、またはアナウンスしています。デバイスメーカーによるこれらのハードウエアを使って、機器メーカーは効率良くPROFINET OVER TSN製品を開発し、その結果、多くの対応製品が発売されることになります。

Q:最初の対応アプリケーションはいつ頃か?

TSNをインダストリアルオートメーションで使用されるTSNサービスを定義したプロファイル IEEE/IEC 60802が適用されしだいです。(2021年以降)

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